ラプターズが日本のファン層拡大に目を向けるべき理由

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The following is a Japanese translation of a guest post by Raptors Info Japan. The author is also the translator.

日本のバスケットボールは今大きな転換点を迎えている。2019年のNBAドラフトでワシントン・ウィザーズに指名された八村塁はスターターに定着し、メンフィス・グリズリーズでキャリアの第一歩を踏み出した渡邊雄太はトロント・ラプターズで本契約を手にした。

そんな日本のバスケットボールにとって重要なタイミングで訪れたのが東京オリンピックだった。パンデミックによる1年の延期は逆に渡邊を始めとしたチームの大いなる成長に繋がり、世界の強豪国相手に善戦を見せた。結果的には勝利を収めることはできなかったが、オリンピック前にはフランスに勝利するなど長年の日本人バスケットボールファンにとっては感動的な瞬間がいくつもあった。

大会前には、渡邊は日本のニュース番組のインタビューにいくつも登場し、人気バラエティ番組にも出演した。渡邊自身の知名度も、そしてバスケットボールの人気も上昇した今、今後数年間の渡邊の活躍やバスケットボール界の動向が日本のバスケットボール文化の発展に向けたカギを握っている。

しかし、この波は海の向こうに届くかもしれない。渡邊が所属しているトロント・ラプターズにとっても、重要な局面となる可能性があるのだ。

渡邊の影響力の大きさ

本題に入る前に少しばかり自己紹介をさせていただきたい。筆者はRaptors Republicにおいて記事の日本語訳を担当している。また、Twitterでは日本語でラプターズに関する情報を発信するアカウント『ラプターズ情報局』を運営している。2020年の1月に始めたこのアカウントは、当初は400人程度のフォロワーしかいなかった。当時は日本人ラプターズファンのみにフォローされている小さなアカウントだった。

それを変えたのが渡邊の加入だった。ラプターズでの彼の役割が増えるにつれてフォロワー数も増え、ついには5000人に届こうとしている。今年のドラフトロッタリーでのラプターズのように、NBA30チームの中から当たりくじを引き当てた気分だ。彼の契約は開幕日に保証されるが、実質その日は筆者自身の保証日でもあると言えるだろう。この筆者の体験はいかに渡邊が日本国内で影響力を持っているかを示している。

渡邊のTwitterアカウントは約18万人のフォロワーがいて、これはフレッド・ヴァンブリートパスカル・シアカムよりも多い数字だ。同じく出身国のスター選手であるゴラン・ドラギッチは約37万人にフォローされているが、数週間後には渡邊がラプターズで最もフォロワーが多い選手になっている可能性だってあるのだ。

この渡邊の人気の要因は現在NBAに二人しかいない日本人選手の一人、という希少性だけではなく、日本人の気質にもあるように感じる。日本に様々なサブカルチャーを愛する人が多く存在する『オタク』文化は、一つのものに没頭し情熱を持って追いかける日本人の性質の現れだ。NBAに精通しているファンは他のスポーツと比較すると多いとは言えないものの、各々が並々ならぬ熱量で追いかけているということだろう。

今年3月にNBAが発表した日本国内の選手個人のジャージとチームグッズの売り上げの順位では、渡邊とラプターズがそれぞれトップになった。もちろん、日本の街を歩いていてそういったグッズを身に着けている人を見つけるのは難しい。しかし、オリンピックでは多くのファンがラプターズのジャージを着て日本代表を応援していたはずだ。実際、前哨戦でアリーナを訪れていた雄太の母もシティ・エディションジャージを着用していた一人だった。

既にこういった経済的な面で、渡邊の影響力の大きさは現れている。

今後はこういった既存のグッズ販売による収益に加えて、日本の市場向けの展開ができれば効果は大きいだろう。漢字や日本風のデザインを用いたグッズは日本人に限らず多くのファンの興味をそそるはずだ。これらはラプターズの収益源となるだけではなく、フランチャイズと海外のファンの思いを繋ぎ、将来的なファンや選手、スカウティング、トーナメントなど様々な形での国際的な協力の礎となるだろう。

ファン層のグローバル化の必要性

しかし、こういった一時的な経済効果だけでなく、ラプターズはグローバルなファン層の拡大に目を向けるべきである。長期間にわたって利益を生むために重要となるのは、日本の渡邊ファンを持続的なラプターズファンにできるかどうかだ。

筆者が今年の2月にTwitterで行ったアンケート調査では、回答したラプターズファンのうち39%が渡邊の加入以降にファンになったと回答した。しかし、中にはシアカムやヴァンブリートですら知らないと回答したファンもいた

彼らがラプターズファンであることを否定するつもりは毛頭ない。しかし日本人選手に関係なくとも、好きな選手の移籍に応じて毎年応援するチームを変えるファンは少なくない。いつか渡邊がラプターズを去った後も、そういったファンがラプターズファンを名乗る可能性は低いはずだ。

日本のラプターズファン層を拡大する施策を検討する前提として、筆者はラプターズというチームが日本人を惹きつける魅力を持っていると考えていることを強調しておきたい。

まず、チームとしての特性や歴史は日本人好みのはずだ。カナダ唯一のフランチャイズという特別性や素晴らしい育成プログラムによりロッタリーピックでない選手たちが活躍している物語性には誰もが虜になる。同時に、近年の安定した強さも応援する理由になるだろう。(あくまでトロント・ラプターズの話である。タンパ・ラプターズは含まないものとする。)

チームの歴史の浅さも、かえって新規ファンにはありがたい。歴史を振り返る上でスティールやブロックのスタッツがないような時代まで遡る必要もないし、ヴァンブリートの54得点のようなフランチャイズ新記録も生まれやすい。我々にはウィルト・チェンバレンはいないからだ。チームの歴史上の重要な瞬間は全て映像として残っており、これは全てのフランチャイズに共通することではないのである。

また、フリーエージェント獲得には不利なトロントという立地も、日本人ファンにとってはその限りではない。つまり、日本においてラプターズ人気を高めるためには、選手以外のこれらの魅力を積極的に発信し、日本人のオタク気質に火をつけることが重要になる。

日本語での情報発信

これらのラプターズの魅力を日本のファンに向けて届けるためにはやはり日本語での発信が最も望ましいだろう。

数年前から日本のNBAファンの中ではレイカーズとウォリアーズのファンが圧倒的に多い。この二つとラプターズを含む他チームとの大きな人気の差は言語の違いに起因するだろう。日本語でのNBAに関する情報は非常に限られている。そのため、レブロン・ジェームズやステフ・カリーのようなリーグのトップスターに関する情報は簡単に手に入るが、その他のチームについては英語がほとんどわからないファンが自ら情報を集め、いわゆる”沼”にハマるのは難しいはずだ。

幸運なことに、現代は海の向こうへ手軽に情報を届けるツールが存在する。TwitterなどのSNSだ。

注目すべき前例はワシントン・ウィザーズだろう。ウィザーズは日本人初のドラフト1巡目指名選手として八村を獲得した直後の2019年9月に日本語のTwitterアカウントを開設した。ポッドキャストや動画などの日本人向けのコンテンツが豊富で、今では7万人近くにフォローされている。

もしラプターズが日本語のTwitterアカウントを開設するとなれば、ただ日本語に翻訳するだけでなく、ウィザーズのようにコンテンツを日本向けにする必要はあるだろう。個人的にはフレディ・ガレスピーがストローの穴の数についてルーキー3選手と議論している動画は大好きだが、渡邊しか知らないようなファン向けとは言えないはずだ。日本向けに作られた新たなコンテンツがあれば、影響は絶大だろう。

もっとも、真新しいコンテンツの制作は必要ないかもしれない。歴史的なチャンピオンシップ・ランやヴィンサニティーを振り返っても良いし、チーム名の由来をスティーブン・スピルバーグの生い立ちまで遡ったりしても良いかもしれない。地元のファンにはよく知られた逸話であっても、新たな日本人ファンにとっては見飽きたものではないはずだ。そういったコンテンツも渡邊ファンからラプターズファンへとなるきっかけとなるだろう。

先のことはだれにもわからないが、善は急げだ。渡邊が今後数年間にわたってチームのコアメンバーの一人になるとは考え難い。今のところ彼の契約は部分保証であり、チームを離れる可能性と隣り合わせである。今シーズン中にその日が訪れることだってあり得るのだ。

渡邊だけでなくチームの人気を高めたいのであればこのチャンスを見逃すわけにはいかないだろう。国際色豊かな街であるトロントに位置するアメリカ国外唯一のフランチャイズとして、ラプターズは既にNBAの国際化の先頭を歩んでいる。マサイ・ウジリは『Giants of Africa』のキャンプを始めとしてアフリカのバスケットボールに力を入れており、ラプターズは多くの市場で足掛かりを築いている。しかし、足掛かりの数に限界はない。バスケットボールに追い風が吹く日本に目を向けることで、収益に繋がるほか、生涯のラプターズファンを生むことができるはずだ。渡邊がロスターに加わり、ラプターズはWin-Winのチャンスを前にしている。この機会を、逃す手はない。

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