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2020-21 プレーヤーレビュー:渡邊雄太

A Japanese translation of our Yuta Watanabe season in review article.

著者:Manny Rao

翻訳:Raptors Info Japan

This is part of a series of player reviews from the 2020-21 season. To find the remainder of the series, please click here. The following is a Japanese translation of an earlier article titled 2020-21 Player Review: Yuta Watanabe.

一貫性のないことだけが一貫していたシーズンの中で、ニック・ナースには様々なラインナップを試す余地があった。彼が好きでそうしたわけではなく、負傷やCOVID-19のプロトコルのためであった。しかし、我々はトロントの新しいメンバーについてよく知ることができた。現在のロスター状況の明確さはシーズン終了時とあまり変わっていないが、ラプターズは決して悪い位置にいるわけではない。そんなチームの有望株の1人が渡邊雄太だった。彼は過去の2シーズンをグリズリーズ傘下のGリーグのチームであるメンフィス・ハッスルで過ごしていた。彼は2018年にドラフト外となったが、2018年のサマーリーグにおいてブルックリン・ネッツでプレーし、その後、元バンクーバーのフランチャイズと2way契約を結んだ。

今シーズン、彼はこれまでのメンフィスでの2シーズンの合計よりも多くのNBAの試合に出場した。渡邊はエグジビット10契約を11月下旬に結び、12月にトロントは2way契約へと変更した。

彼は役に立てることを示したが、ナースがあらゆる面でやりくりしてきた今季、一貫したシーズンを送れた者はいない。彼が30分プレーしたのはシーズン終盤のクリッパーズ戦のみだった。オーランド・マジック相手にはキャリアハイの21得点を挙げ、攻撃面での効率の良さ(FGは7/11、スリーは2/4)を見せることができた点は良かったが、ジェフ・ウェルトマン(ラプターズのバスケットボール事業元EVP)が再建に向けて舵を切ったため渡邊の輝きは非常に若く経験豊富なチームが相手だった。

今回私が見返したこの2試合は、彼がキャリアハイの30分プレーしたという点と、オールスターのビッグマンを相手に印象的なディフェンスでの傾向を見せたという点で選んだ。もちろん、2試合だけを見て選手を分析するのはあまり効果的ではない。それでも、一定の傾向に加え、選手を封じた特定のマッチアップなどであれば示すことができる。また、トロントのどの試合であっても彼は最も多く走っていたためその点に注目した。さらに、クリッパーズはペイント内が狭い。それまでスラッシャーではなかった彼にとって、その点を鍛えるには最適な試合だ。

このクリッパーズ戦で彼は6得点6リバウンド2スティール1アシストを記録し、FGは33%、5本のスリーポイントの試投のうち2本を決めた。FG%を除けば、シーズン平均(4.4得点3.2リバウンド0.5スティール、0.7本のスリー)を上回る数字を記録した。

断っておくが、渡邊の最高到達地点としては、レブロン・ジェームズの数字には程遠い。とはいえ、彼のウイングスパン(6フィート8インチ)と身長(6フィート9インチ)を考慮すると、フィジカル面でのツールは揃っている。まだまだ改善すべき余地はあるものの、繰り返しになるがまだリーグでは3年目で、20試合以上プレーした初めてのシーズンである。

まずは守備面に目を向けると…ツールは揃っている。筋肉を増やし自信をつけることが渡邊にとっては最も大切なことだと思う。彼の体格を振り返れば、細身で俊敏で長さもあるのだから、守備のエースになるために必要なのは努力だけだ。渡邊がコート上の全員の位置を読んでいる完璧な例がこれだ。

このプレーは、渡邊がディフェンシブ・アンカーとなった。オーランド・マジックの選手全員を視野に捉え、ラプターズは3-2ゾーンディフェンスを敷いている。明らかに二コラ・ブーチェビッチ(9番)がボールの受け手であり、彼が向かう場所の選択肢は一つしかない、バスケットに一直線だ。なぜならもし右に行こうとすればシアカムがスイッチできるし、カイル・ラウリーが上がり、渡邊はベースライン沿いに右にスライドし、ブーシェはベースラインのコーナーまで下がり、ゾーンディフェンスはリセットとなる。あるいはシアカムが長さを活かしてブーチェビッチを抑え込むことができれば、トロントの他のディフェンダーが全てのパスコースを遮り、ゾーンディフェンスはリセットされる。

ここで、ラウリーが彼の専売特許であるチャージを狙うか、もしくは渡邊がアンソニー・エドワーズの洗礼のリベンジを果たす時が来た(申し訳ないが、あのダンクは凶悪だった)。彼は足を止めず、マジックのビッグマンとの衝突へと突き進んでいる。

そして直接対決となった。渡邊にとっては、やるかやられるかだ。ブーチェビッチにとっての最も簡単なパス相手は左のドウェイン・ベーコンだったが、彼のスリーからのショットは今季29%だった。ラプターズは渡邊よりも45ポンド重いブーチェビッチとの対決に全てを賭けるしかなかった。

バーン!ブーチェビッチはワタナベ山を越えられず、結果的に気迫溢れるブロックとなった。しかし、これはこのラプターズのフォワードが相手オフェンスの動きを適切に予測できていることを示してもいる。また、ディフェンスにおいて長さを活かしてどれほど違いを生み出せるかも物語っていた。しかし、彼の今の体格に体重を増やして筋肉をつければ、より良いインサイドでのディフェンダーになれると私は考えている。これに加えて2つのブロックを記録し、キャリアハイの3ブロックを達成したことも特筆すべき点だ。

オフェンス面では、既に40%のスリーポイントを誇るシューターである彼には機会が多くある。

上のような状況では、渡邊には2つの明確な選択肢がある。一つ目はペイント内にカットインすることで、これが最も論理的だ。複数のクリッパーズのディフェンダーが低く守っていたとしても、ファウルを誘いフリースローを貰えれば、トロントはリードを8点まで広げられるかもしれない。フレッド・ヴァンブリートは捕えられて完全にドリブルを辞めてしまったためどこにも行けず、渡邊はトップの位置では何の役目も果たせない。ヴァンブリートが誰かにボールを渡すためにはボールは複数のディフェンダーの間をすり抜ける必要があるが、オープンなラプターズの選手たちの中では渡邊が明らかにナンバーワンの選択肢だ。しかし、それは彼がボールを受け取りに来るかどうか次第である。

二つ目の選択肢は、ヴァンブリートの後ろのコーナーへと切り込んでキャッチ&シュートを放つことで、こういった局面では彼はトロントで最も効率的なシューターであった。もしこのコーナーに複数のクリッパーズの選手が来た場合は複雑になってしまうが、そうなったとしてもシアカムとバーチからディフェンスを引き離し、オフェンスを開放することができるのだ。

総括となるが、渡邊はもし来季ローテーションに割って入ることができれば、堅実なロールプレーヤーへと変身するチャンスがある。しかし、彼の実力については未だに疑問点がいくつかある。契約がエグジビット10から2wayに、さらにはNBA本契約へとなった渡邊には、成長してトロントの勝率での五割復帰のために貢献できることを示すチャンスがあるだろう。